「……お前、名前は?」

「……え?」

 その時、爽太さんはわたしの名前を聞いてきた。

「俺は小田原爽太(おだわらそうた)だ。……お前の名前は?」

「……加藤、紅音(かとうあかね)です」

「よし、紅音。……お前のその借金、俺が全額払ってやる」

「……え?」

 初めて会った人にそんなことを言われて戸惑うのは当たり前なのだけど……。
 なぜそんなことを言ってくれるのか、分からなくて……。ただただ、瞬きを繰り返すことしか出来なかった。

「……わたしの借金を、あなたが?」

「ああ。 その変わりに、俺のお願いを聞いてくれるか?」

「……え? お願い、ですか……?」

 お願いとは、一体何なのだろう……。そんなことを思っていたら、爽太さんはこう言ってきた。

「期間限定で、俺の妻にならないか?」

「……え?」

 期間限定で……妻?え、それってまさか……。
 その、まさかなの……?

「妻って……。わたしと、あなたが……?」

「そうだ。俺とお前がだ」

 わたしと彼が、結婚……。しかも今日初めて会った人と、結婚……?
 そんなの、急すぎる……。