8月25日(前編)

おでこに手を伸ばしかけた時、誰かの腕が伸びてくるのが見えた。

「ごめんっ、大丈夫だった?」

と前髪に触れる誰か。

多分、扉をぶつけた人だろう。


「えっと…夏目、さんだっけ?」

そう言って顔を覗き込もうとしてきた時「いいよ、行こ」と言ったのは水樹くん。


「あ〜でも……本当ごめんっ」

それだけ言うと水樹くんを先頭に帰って行った。


ジンジンと痛むおでこに手を飛ばしてため息をつくと胸が痛んだ。

『いいよ、行こ』と言った水樹くんの声がこだまする。


…別にいい。

心配なんてされたくもないし。