8月25日(前編)

2人が何を話しているのかは聞こえなかったけど、そのやり取りは何となくわかる。

時折笑い合いながら会話をする2人を見ていると普段からの仲の良さが伝わってくる。


そして、彼女から小さな箱が差し出され、それを笑顔で受け取る水樹くん。


「……帰ろ」

はぁ…やっぱり無理だ。

来なきゃよかった。


踵を返し、来た道をトボトボと歩く。

バレンタインデーなんて嫌いだ。


リュックから取り出したチョコに、そっと視線を落とした。

走ったせいかラッピングが余計に乱れて、箱も変形していたりで…

とても渡せる見た目ではない。


だからやっぱり渡さなくてよかったんだ。