8月25日(前編)

沢田先輩には気持ちがお見通しだから困る。

「また来年渡します」

そう言ってリュックをおろすと「何言ってるの?」と顔を覗き込まれた。


「今日はまだまだ終わらないよ。バイト終わってからでも遅くはないはずだよ。本当なら今すぐにでも!って背中押してあげたいけど、さすがにそこまではね…」

「でも水樹くんもバイトだと思うし…」

「じゃ、バイト終わったらまたダッシュだね?」

と笑われた。


…そっか。

水樹くんのバイト先までダッシュすれば間に合うかもしれない。


きっと、わたしのチョコが一番最後になるだろうけど…それはそれで違う一番ではあるのか。


「わたし、終わったらダッシュしますっ」

そう言うと「それでこそ紗良ちゃん」と頭を撫でられた。