8月25日(前編)

だって、水樹くんには忘れられない人がいる。

ってことはわたしはずっと片想いのまま。


朝陽を好きになれば丸く収まるというか…

朝陽もわたしも苦しむことはないのに。

どうしてわたしは朝陽じゃなくて水樹くんなんだろう。


「紗良、そろそろ行こ?」

千波の声にハッとすると、二人三脚の招集がかかっていた。


いよいよだ。

入場門までくると緊張がマックスに。


「練習通りにすれば大丈夫だから」

隣に並んだ平野くんがそう言ってくれて、少し落ち着くことができた。


「別に転けてもいいんだよ?次にタスキを渡しさえすればいいんだから、そんなに意気込むことはないよ」