8月25日(前編)

どうしよう…。

だって水樹くんが来ると思っていたから、どこかで安心しきっていたんだ。


水樹くん、どうしたんだろう?…

「夏目さん?」

ふと名前を呼ばれ、顔を上げるとニッコリ笑う水樹くんの友達が立っていた。


ーー平野逞[ひらのたくま]

下駄箱の扉をぶつけてきた本人だ。


「俺、逞っていうんだけど覚えてくれてる?」

って質問はちょっとおかしいと思う。


一応クラス全員の名前と顔は把握済みである。

小さく頷くと「よかった」と笑う平野くん。

「あ、あの時は本当ごめん!傷…とか残ってない?」

と平野くんの視線がおでこに移るのがわかった。