すると口元に置いた手を優しく掴まれ…


水樹くんの唇と重なる。

でも、それはほんの一瞬で…

だけどわたしの中ではすごく長く感じて…


水樹くんの瞳を見ることはできなかった。

「やっぱり紗良ちゃん甘いね」

水樹くんはそう言うと立ち上がり「そろそろ帰ろ」と声をかけてきた。


素直に立ち上がると、いつものようにドアを開けて先に行かせてくれた。


いつもと何も変わらない水樹くんだけど、唇に残る感触が変に水樹くんを意識させる。


「紗良ちゃん、夏休みに入ったらどっか遊びに行こっか」

「え…夏休み?」

「もうすぐ夏休みだよ?」