僕は静かに抱かれていた弥凪の、ブラウスの

ボタンに手を伸ばした。ひとつ、ひとつ、

ゆっくりと外すたびに、彼女の白い肌が露わ

になってゆく。

その肌に指を滑らせ、首筋にそっと口付けると、

微かに、彼女の息づかいが聞こえた。

僕はやさしく背を抱きながら、弥凪の体をベッド

に沈めた。僕の狭い視界に、頬を薄紅色に

染めた恋人の顔が映る。

(あいしてる)

彼女に伝わるように、そう、唇を動かすと、

僕はやわらかに笑んだ彼女の頭を抱いた。







ふと目を覚ますと、僕の目を通した部屋は

薄暗く、まだ、夜が明けていないのだと

いうことを、悟った。



-----隣に眠る、弥凪を見る。



うっすらと開いた唇は、漏れてしまいそう

になる声を堪えようと噛みしめたからか、

薄く血が滲んでいた。

結局、僕の腕の中で、弥凪は一度も声を発し

なかった。

それでも、必死に僕を受け止めようとしがみ

付く腕は可愛かったし、時折聞こえてくる

吐息も、反り返る顎の白さも、自制が効か

なくなるほどに、艶やかで美しかった。

僕は、眠っている間に滑り落ちてしまった

らしい掛け布団を、彼女の肩にかけた。

その瞬間に、すぅ、すぅ、と、規則的に

聞こえていた寝息が、途絶えてしまう。

僕の気配に気づき、目を覚ましてしまった

弥凪が、面映ゆい表情を浮かべた。

(起きてたの?)

(いや、僕もいま起きたとこ)

顔を向い合わせ、互いの唇で伝える。

(寒いね。コーヒー、淹れようか)

僕がつけたキスの跡を首筋に覗かせながら、

肩を竦めた弥凪にそう言うと、彼女は首を

振り、のそりと体を起こした。

(わたしが、淹れる)

そう言ってにこりと笑った弥凪は、着古した

僕のトレーナーだけを身に付けている。

ここで、白いシャツでも着せていれば、

憧れの“彼シャツ”だったのだけど……

これはこれで、可愛いから僕は満足だった。




弥凪がキッチンへ向かい、お湯を沸かし始め

たので僕もベッドから這い出す。コーヒー、

といってもインスタントコーヒーだから、

彼女はすぐにマグカップを手に、戻って来る

だろう。

僕は薄暗い部屋の中で、ひとり、ぼんやり

と待った。

視界は悪く、ベッドの周囲には服が散乱して

いたが、灯りをつけてしまえば幸せな夜の

余韻が掻き消されてしまうような気がして、

そのままにしていた。

やがて、香ばしい香りと共に、弥凪が戻って

来た。コトリ、とテーブルにマグカップが

置かれる。

(ありがとう)

隣に座った弥凪にそう言うと、僕はマグカップ

に手を伸ばした。けれど、視野の狭さに、部屋

の薄暗さも手伝って、僕の手はすぐにマグカップ

を探し当てることが出来なかった。

すると、すっ、と弥凪の手が伸びて僕の手を

掴んだ。そして、僕の手をマグカップへと

導いてくれた。