艶やかな、けれど、少ししっとりと汗ばんだ

彼女の髪を撫でる。

ついさっき、心が通じたばかりなのに、

不思議と何年も一緒にいるような心地だった。

僕は彼女の髪に頬を寄せ、慈しむように

抱き締めた。彼女も僕の背に腕を回し、互いの

温もりを伝えあう。

キー、とブレーキの音をさせながら、僕たち

の横を一台の自転車が通り過ぎる。

ちらりと視線を向けられた気がしたが、僕たち

はその腕を離すことが出来なかった。

(帰ろうか)

ようやく、そのひと言が言えたのは、鳥居の

向こうから石段を下りてくる人の足音が聞こえ

たからだった。

僕はこくりと頷いた彼女の手を握ると、街灯の

白い灯りに照らされた坂道を、のんびり歩き

始めた。