「霧野さん」



そう呼ぶと杏衣ちゃんは一瞬俺の顔を見て固まってはこっちに来た。


「なんですか」
「放課後、俺の家に来て、必ず」


小声でそう呟いて去っていった。


なんの用事があるんだろう……


私は今は蓮の家にいたい。


いや、正確に言えば、勇斗さんの家には行きたくないってこと。


「杏衣、和藤先生からなに言われたの?」
「放課後、家に来いって」


「呼び戻すんだ」
「そうかな?」


「好きな子を呼び戻さないわけないでしょ〜!」
「好きか……」


勇斗さんは梨沙子先生なんだ。


梨沙子先生と両想い。


それを私は邪魔はできない。


荷物持って出て行けとか言われるのかな。


「杏衣は和藤先生のことどう思ってるの?」
「好きだよ」


「ごめん聞き方を間違えた、水樹と和藤どっち?」
「え?」


「正直水樹はかっこいいしずっと杏衣のことを好きって言ってるのに最初は嫌いだとしても徐々に気持ち変わるでしょ」



何度も突き放してるのにずっと好きでいてくれて、告白してくれて、


私にどことなく似ていてお互い周りには言えないところを理解できる部分があって、遊び人でも多少強引でも私を見てくれてる。


嫌いではない。


揺らいでしまっている自分がいる。


でも勇斗さんを好きなのはほんと。


でも梨沙子先生と幸せになって欲しいと思う。



梨沙子先生は勇斗さん以外考えられないと言っていたし、それを邪魔はできない。


勇斗さんの隣にいるのは私じゃなくて梨沙子先生だと思うから。