紫音は、急ぎ足で生物室に向かっている

「…え…」

紫音は、男子生徒に呼び止められる

「あの、陽向さん少しだけ時間下さい!」
「?はい」

呼び止められて何だろうと思う紫音

「俺、去年からずっと好きでした」
「え………?」
「もし、よかったら、付き合って下さい!」

紫音は、自分が告白されていて驚いている
そんな日が来るとは思わなかったらしく

「あの…まずは告白ありがとうございます!」
「…はい…」
「でも お付き合いはできませんごめんなさい」

丁寧に頭を深く下げ謝る 紫音に対し
振られたはずなのに 笑っている男子生徒

「え……」
「俺、陽向さん好きになれてよかったです!」
「どうして…ですか?」
「誠意を感じたから…陽向さんで本当よかった」

ありがとう と言って走っていく 男子生徒。

「誠意を…感じた?…。」

紫音は男子生徒の言葉に謎だと思いながら
生物室に向かい始める。

ーーーーその時

「紫音ちゃーん」
「……こ……園田先生…」
「まっさかモテ子だとはね〜」

後ろから芳樹が現れ視線を合わせずにいる紫音

「俺、知らなかったな〜」
「……」
「生徒だし?俺には関係ないし?」
「………」
「でも告白シーン見せつけられるとは?」
「………」
「ね、紫音ちゃん♡」

紫音は下を向いていたが芳樹の方に向く

「怒って、、ますか、、?」
「いいえ?ぜ〜んぜん怒ってないよ?」

ニコニコ顔で返答される紫音の問い…

「行きましょうか?紫音ちゃん♡」

紫音には、分かっている。
芳樹が怒っている事は、お見通しだ。
紫音ちゃんなんて呼ばないし
♡なんてつけて話す、たまじゃない。
目の前の芳樹が恐ろしくてたまらない紫音

生物室の前につきドアを開けられ

「あ、ありがとうございま〜っ」

カチャッ

生物室に着いた瞬間キスを落とされた…
はたまた静かな教室内にはリップ音が響いた

「芳樹…ん…」
「そんな声出すなよ頼むから…」
「だって、芳樹が!!!」
「し!誰か来たら困るだろ?」
「……」

芳樹は唇に人差し指を当てて静かにと言い
紫音は顔が赤くなり恥ずかしがり

「可愛いすぎだろ、紫音」
「芳樹………」
「…ムカついた」
「……へ?」
「告白してた奴にムカついた…妬いた…」
「妬いたっ…て…」
「お前が…あんな奴に…可愛い顔向けたろ」

芳樹は恥ずかしがりながら紫音を抱き締めた

「芳樹…私には…芳樹だけ…だよ?」
「紫音……」

再びリップ音が響き渡り

「芳樹…帰ろう。」
「ああ……あ、お前何しにここに?」
「あ、そうだ!お弁当箱取りにだよ!」
「やっぱりか…その…美味しかった…」
「あっ、よかった…」
「らしくないかもしれねーけど、その、」

芳樹…何を言ってるか分からない…
その、、の先が聞こえない…
でも美味しかったんだ、嬉しいな…

「て、」
「て?」
「手紙書いたんだ」
「えー!!!面倒くさがりな芳樹が!?」
「……悪かったな。」
「欲しい!てか頂戴!読みたいよ」

手紙を書いたと言われ心から喜び
ニヤニヤが止まらず目を輝かせている紫音

「確かこの辺に……ん?」
「どうしたの?」

芳樹は置いてたはずの手紙が見当たらず
探しまくっているが一方に見つからない

「マズったか…俺」
「え、なくなったの?!」
「…また書く…多分無くしただけだ」
「そんなわけないじゃん!誰かが取ってたら」
「大丈夫だから…落ち着けよ」

明らかに不安そうにしている紫音を見て
芳樹は、何とか落ち着かせる

「でも、もしかしてたら芳樹っ」

テンパリだしていたら紫音を包み込む芳樹
抱きしめていた。

「心配すんな…何かあれば梨華が居るから」
「…梨…華…?」
「梨華に言われてんだよ…手助けするって」
「梨華が?」
「ああ。紫音に何かあったら許さねーてな」
「……梨華。」

梨華が言っていたという言葉に泣き喜んだ
どれだけ梨華に大切にされているか身に染み

「ムカつくけど梨華には勝てねーよ」
「誰にも…誰にも梨華は越せないよ…」
「あ?」
「残念だけど私には一生梨華が一番だから」
「……だろうな」

この時は誰も思いもしなかった事がある。







裕貴に、一部始終のやり取りを見られていた事

この時芳樹が切ない顔して紫音を見ていた事

そうして……この先皆の歯車がずれる事……。