「褒められて照れてるんですか?」

「そんなんじゃないから」


「……」

「なに?」


幻夢は無言のまま私の顔を見る。


「男にそういう顔を見せるのはやめておいたほうがいいです」

「そういう顔って?」


「無自覚なところは姉貴らしいんですけどね。……はい、できましたよ」

「こんな凝った髪型にしなくても」


編み込みっていうんだっけ?


「そんなに時間かかるものじゃないので。次にやるときは別の髪型を試してみてもいいですか?」

「す、好きにしたら?」


自分では可愛い髪型にできない。だから幻夢がやってくれるのは助かる。

だけど、それを口に出すのは恥ずかしい。


「ありがとうございます!」

「いきなり抱きつくのはやめて」


いつもの幻夢に戻った。


結局、私はどういう顔をしていたのかしら。


「ゆっくり話してたら遅刻ギリギリの時間ですね、あはは」

「急いで家を出ましょう」


「このままサボります?」

「不良じゃないんだから行くに決まってるでしょ。今日から授業なんだから」


「それ元闇姫がいうセリフじゃないですよね」

「なにか言った?」


「いえ、なんでもないです。それじゃあ走りましょう!」


バタバタしながら私たちは家を出た。


幻夢はさりげなく私の手を握る。


繋いだその手は中学の時よりもゴツゴツしていて……。見た目は可愛くても、しっかり男の子なんだと思った。