「着替え終わったわ。それじゃあ行きましょうか」

「えぇ!?早くないですか?」


「早くしないと遅刻するわ。それに着替えに手間取っていたら時間の無駄でしょ?」

「だからって、髪が跳ねてるのをそのままにしておくのはどうかと思いますよ」


「え?あ……」


鏡を見ながらセットしたはずなのに後ろ髪が跳ねてる。


「そこのソファーに座ってください。僕が髪をといてあげますから」

「あ、ありがと」


そういって幻夢はリュックから櫛を出して私の髪をといてくれた。


「昔よりも大分伸びましたね」

「あれから切ってないから。とはいえ毛先は荒れてるから整える程度にはカットしていたけど」


「そんなことしなくても姉貴の髪は綺麗ですよ」

「え?」


「また冗談だって思ってます?」

「そんなことない」


相変わらず無自覚で私のことを褒める幻夢に私は翻弄されっぱなし。だからといって幻夢に特別な感情を抱いているわけではない。


だけど、やはり男の人に容姿のことを褒められると不覚にもドキッとしてしまうのが自然というもので……。