「猫が……」

「え?」


「教室に入ろうとした瞬間に外を見たら子猫がいたんだ。木の上から降りられなくなってて。だから助けてた。そのあとは子猫と木陰で昼寝してた。……それで目が覚めたら学校が終わってたんだよ」

「子猫を助けたことに関しては咎めたりしないがそのあとが問題だな」


「まだ初日のくせに教師としてやたら……。お前だって裏社会の人間なんだぞ、忘れたのか?」

「忘れるわけないだろ。お前に……壱流に助けてもらってなかったら今頃オレはここにはいない」


「それなら感謝しないとな」

「それとこれとは話が別だ!」


「痛てぇ!なにも殴ることないだろ!?」

「軽く小突いたくらいで大袈裟だ。ほら、例の小瓶。これでしばらくは大丈夫だろ?」


「俺は直接吸うほうがいいんだけどなぁ」

「オレが嫌だから小瓶に入れてるんだ」


「傷なら俺が治せるのにか?」

「それでも毎日のように吸血鬼に吸われる身にもなってみろ。オレはただの人間だし、お前は最初から吸血鬼だったわけじゃないから未だに吸血するときも手加減はできないし。……それから、」


「説教は他でやってろ」

「壱流、わかってるのか?
小瓶は節約して飲むんだぞ」


「そんなこと言われなくてもわかってる。……小瓶がなくなっても直接吸うし」

「またそうやってお前は」


「明日からはちゃんと授業に出るから安心していいと教師に伝えておけ。俺は会合に行ってくる。あとのことは任せた。飯は……オムライスで」

「わかったよ。気をつけてな壱流(出会った頃から子供味覚なのは変わらないな)」