「炎帝…」

「っ……」


壱流は私の髪に優しく触れる。


「やっぱり…」

「?」


「お前の血は吸えない」

「どう、して」


「勘違いすんなよ?」


え?


「炎帝の血が不味いとかお前が嫌いだからって理由じゃない」

「そう」


直前で拒絶されたと思った。


「俺はこんな弱ってる炎帝を吸うことはできない。本当にお互いが同意した上じゃないと俺が嫌なんだ」

「私、べつに弱ってなんか…」


「怪我で消耗してる。さっきも言ったろ?炎帝はもっと自分を大事にしろ。俺は吸血鬼だからわかるんだよ、お前が疲弊してんのも。ま、なんとなくだけどな」

「…」


私だって気付かなかったのに…。でも、壱流に言われたら急に疲れが。

これも敵のテリトリーにいてずっと気を張っていたせいだ。


心なしか視界がぼんやりとしてきた。


「…い、帝…!」

「……」


壱流がなにか言ってるけど私には聞こえない。


私はそこで意識を手放した。


「ほら、やっぱり俺の言った通りじゃねえか」


ピコン。


「この音…炎帝のスマホか?」


プルプル。


「はい、もしもし?あ、このスマホの持ち主なら今は眠って…」

「姉貴、助けてください!!」


「!」

「僕はいいんです。僕以外の仲間だけでも早く…たすけ」


「おい、なにがあった!?」


―――ピー。


「今のは一体?それに姉貴って…」