卒業してからも、休みの日には時々、那桜の家に遊びに行っていたけど、彼女に会えたのは数回だけ。緊張しすぎて会話ができず、自分が情けなくなっま。

そして2回目の春を迎え、高2の春を迎えた。

今日は、中学のメンバーで花見をする事になって、会場で待ち合わせ。
電話が鳴った。

那『春瑠、俺らの先に着いて買い出し中!◯◯
 の辺りで場所取ってあるから!先に行って
 て。貴志(たかし)がいるから。』

春「了解!」

『あれ?春瑠?』

春「ねぇーちゃん!」

香『なに?今日、春瑠も花見に来てたんだ!言っ
 てよ。車で乗せて来たのに。』

春「別にいいよ。彼氏も一緒なんだろう?気まず
 いし。」

香『今日は、友達となの!春瑠は誰と待ち合わ
 せ?那桜君?』

春「そう!◯◯の辺りで他の友達も一緒。」

香『私もそっちにいくの!一緒に行こう!』

春「ちょっと、腕組むなよ!」

香『いいじゃん!さぁ、行こう!』

はぁ...誰かに見られたら面倒臭いだろ。

このテンションが高めな人は、俺の4つ上の姉
香瑠(かおる)。大学3年で俺と違って、積極的で明るい性格で、弟の俺が言うのもおかしいけど、整った顔立ちで綺麗な人だ。

香『ねぇ、春瑠!あんた彼女いないわけ?』

春「いないよ。いきなり何?」

香『花見も男ばっかでやるんでしょ?寂しくな
 い?』

春「別に。楽しいからいいじゃん。」

香『楽しいかもだけどさ...』

春「ねーちゃん。また見られてるよ!」

香『私じゃない!私たちだよ。』

春「なにそれ。なんの自信?」

香『春瑠...もっと自覚したら?自分がいい顔して
 るって!』

春「はぁ?」

香『あんた、今まで何人に告られてきた?』

春「さぁ?」

香『私は知ってんだからね!
 もっと自分に自信持ちなよ。色んな意味で、
 もっと積極的になりな!』

春「・・・」

分かってるよ。自信がないのも、積極的になれてないのも...

俺は3にん兄弟の末っ子。
長男の悟瑠(さとる)は俺の6個上で医者を目指してる。昔からなんでもできて、しっかりしてて、面倒見もよくて...親にとっても自慢の息子だと思う。
長女の香瑠もちょっとガサツなところはあるけど、外面はよくて勉強も出来る。
で、俺は...
末っ子っていうのもあって、昔からみんなに可愛がられて育って来た。有難いことだけど、自分がやるよりも先に周りが動いてしまう。だから、自分から行動していかなくても事は過ぎていった。
自分でも分かってる。変わらなきゃいけないことくらい。
変わりたい...

あれ?あの桜を見上げてる子って...

春「美...桜ちゃん?」  美『えっ?』 

美『先輩。』

香『はるー、どうしたの?知り合い?』

春「お、おん。ちょっと先に行ってて。すぐ行 
 くから。」

香『わかった。早く来てね。』

何か話さないと...

春「久しぶり。元気?」

美『はい!なかなか会えないですもんね。』

春「結構遊びに行ってるんだけどね。すれ違いだ
 よね。」

美『あれ?今日は、お兄ちゃんも一緒ですよね?
 先輩と遊ぶって言って、私より先に出かけたん
 ですよ。』

春「今、買い出しに行ってる。」

決めた!連絡先を聞く。頑張れ、俺!

春「ちょっと座らない?」

美『は、はい。』

春「てか、桜綺麗だね。」

美『はい。
 自分の名前にも入ってるからか桜が好きで、
 毎年春が楽しみなんですよね。』

春「美しい桜...」   美『えっ?』

春「美桜ちゃんの名前。綺麗な名前だよね。」

美『照れちゃうんでやめてください。でも、先輩
 の季節でもありますよね。』

春「あー、春ね。確かに!俺らの共通点だね。」

俺、大丈夫かな?ちゃんと喋れてるよね。

春「受験勉強どう?」

美『聞かないでください。お兄ちゃんが塾選びか
 ら参考書まで、何から何まで準備して張り切っ
 てます。』

春「想像できる!どこ受験するの?」

美『◯◯がいいんですけど、家から遠いから親は
 反対してて。お兄ちゃんと同じ所なら安心する
 みたいなんで、△△高にしようかなぁって感じ
 です。』

春「俺、◯◯だよ。」  美『えっ??』

春「知らなかった?那桜に聞いてない?」

美『聞いてないです。お兄ちゃん、あんまりそう
 いうこと話さないんで。』

春「そっか。同じ高校になれるといいのにな。」

美『えっ?』 

しまった!また言っちゃったよ。
どさくさに紛れて言っちゃえ!
春「あっ!連絡先聞いて良い?」

美『は、はい!』

春「もし、高校のことで気が変わったっていう事
 があったり、聞きたい事があったり、何でも
 いいから、気軽に連絡して。」

美『ありがとうございます。』

春「美...桜っと。」    美『えっ?』

春「名前登録した。てか、美桜って呼んでいいか
 な?俺のことは、春瑠でいいから。」

美『よ、呼び捨ては...お兄ちゃんに怒られそう。
 じゃあ、春瑠君にしますね。』

春「(笑)いいよ。」  可愛い...    

『美桜!!』   美『健!』

健!?何で健が??

健『探したって。あっ、藤堂先輩?』

春「久しぶり!健。」

美『あー!そっか。二人部活が一緒か。』

健『そう!先輩一人っすか?』

春「嫌、友達が向こうで待ってる。
 二人って仲良かったんだな。」

健『クラスがずっと一緒で。俺たち付き合って
 るんですよ。』

??今何て??
付き合ってる?
あぁ...そうだよね。彼氏いるよな...

春「あっ、そうなんだ。」

香『はーるー!もう、早く来てよー。』

健『先輩も彼女さんと一緒だったんですね!俺ら
 も早く行こう。みんな待ってる!じゃあ、失礼
 します。ほらっ!』

美『う、うん。じゃあ、また・・・』

香『ごめん、邪魔しちゃった?』

春「いや、ちょうどよかった。」

香『可愛い子だったね!』

春「那桜の妹。」

香『そうなんだ!那桜君とちょっと違うタイプ
 だね。可愛かったなぁ!』

可愛いよ。
でも、彼氏がいるんだ...
もうそろそろ諦めなきゃな...