竜希side



すー、すー。


スタンドの明かりだけの部屋に安らかな寝息が上がる。



……寝たか。


俺は歌うのを止め、ベッドを見た。


そこには幼い顔を更に幼くして、口を開けて眠るチビの姿。


なんとも間抜けな表情に笑ってしまう。


でもココに来たばかりの頃は、寝るのを嫌がり、寝ても魘されていたっけな。



起こさないように、ソッと頭を撫でると、ムニャムニャと何かを言いながら笑うチビ。


やはし間抜けな。



チビが来てからの1年は、あっという間に過ぎた。


初めは、"黒豹"に女が入ることを戸惑い、反対していた奴らも、今じゃあ妹として可愛いがっている。



暴走族"黒豹"の末っ子にして、たった1人の姫。


ヤンチャで口が悪くなる時があり、弟なのでは?と思うことも多々あるが……。



間抜けな寝顔を見ながら昔の事などを思い出していたら、控え目なノックが聞こえてきた。


絨毯に座り、ベッドに凭れかけ座っていた俺は立ち上がりドアを開ける。




「司令室へようこそ、ブラック」




っつっても、チビの部屋だけどな!!


あの後、蓮と桂がチビを運んだのはチビの部屋。


ラブラブ、イチャイチャな二人を引き離すために。


なにしろ海斗さんのチビへの溺愛はハンパない。


隠れて覗き見をしていた俺達を引っ張り出すほどに。


いや、悪ノリして楽しんでしまったんだけども。


やはり、そこはそこ。



初代総長には、いくら俺でも逆らえねぇしな。



あんなにユルく、無邪気で子供みたいな人だが、あの人の強さとバイクテクに憧れて



解散していた"黒豹"を復活させたんだ。


それを知ってるのにコイツは……。



俺は音も立てずに入ってきた八雲を睨む。




頭突き3発。