次は…


「瑞希さん。」


私は瑞希さんに視線を向け、目を合わせた。

彼にだけはどうしても伝えておかなければならない。


「私を助けないで。」


「…は?」


「私の犠牲にならないで。」


「どういう意味だ?」


「瑞希さんは、これから先、明るい太陽の下で生きていく。それに引替え私は真っ暗な空の下で少ししか生きられない。
それに、私の年齢でこんなに動けるなんてすごい珍しい症例なんだよ?私と同い年ぐらいのXP患者は一人で歩けない人も多いの。」


私には時間が無いの。


「私は、瑞希さんの時間を1秒でも奪いたくはない。だから、もし、私に何があったとしても私に背を向けて進んで。約束してくれる?」


私は精一杯の笑顔を浮かべて右手の小指を立てて瑞希さんに向けた。


瑞希さんは驚いた顔をしたけど、直ぐに表情を和らげた。


「それが、春陽の望みなのか?」


「うん。」


「望まないお前が望むことを俺は裏切れないな…。」


瑞希さんも諦めたように私に右手の小指を向け、小指同士を絡めた。


「約束…な。」


「うん、約束…。」