マスターは深刻そうな顔を浮かべ、言葉も出ないと言う感じだ。


「でも春陽は紫外線に当たっていない。だから、このまま生きていけるんだろ?」


「XPは、紫外線を浴びなくても神経症状が出てくる病気でもあります。
手足が思うように動かなくなって、歩けなくなって、表情も上手く作れなくなって、話せなくなって、一人じゃ何も出来なくなる。
最終的には、呼吸も機械の力を頼らなきゃ出来なくなって死んでいく。そういう病気。
万が一、紫外線を浴びたら、火傷みたいになってそこがシミになって、酷い時には皮膚がんになる可能性もある。」


「…ッ!」


寝たきりになってやせ細って死んでいく。そんな残酷な病気。

身寄りのない私にとって、この病気は絶望以外の何物でもない。


症状は始まっているけど、それは言えなかった。


病気のことを話しただけでこんな顔をする2人だよ?


症状が出始めてるなんて知ったらもっと心配性が加速して抗争に出るなとか言いかねない。


「私は、守って欲しくてこの話をした訳じゃない。もし、私が動けなくなったらそのまま置いてって欲しいから話しました。」


迷惑になりたくない。

おんぶに抱っこなんて最悪だ。


「病院には…?」


「行ってません。」


「ハルちゃん病院に行ってないって?それって諦めてるってこと?」


諦めてる?

諦めるも何も選択肢がない。


「それに置いてけってなんだよ。置いてけねぇよ。もう春陽は俺の仲間だぞ?仲間見捨てるなんてそれこそ最悪だ。」


「諦めてるっていう表現は少し違います。望まないことにしたんです。」


「望まない?」


「この病気は治療法がない。いつか治療法が見つかるかもしれないとか、太陽の下を歩けるかもしれないとか、かもしれないの希望は私には辛いだけなので。」


諦めるのは簡単。


望み続けるのは苦しくて辛いから。


「ハルちゃん…。」