月下の少女


並べられたすごい量の食事や飲み物は絶対余るだろうと考えていたが、私の考えは甘かった。

ガタイのいい彼らの食欲は凄まじく、ものすごいスピードでお皿を空にしていく。


彼らはそれぞれに会話を楽しみ、onyxに慣れている人が多いのか私に回ってくる仕事は何も無かった。


帰ろうかな。


ここにいても何も出来ないし、かえって邪魔になるかもしれない。


うん、そうしよう。


「マスター。私、やることないので一度部屋に帰りますね。パーティー後の片付けは手伝いますので終わった頃に戻ってきます。」


「え、ハルちゃん帰っちゃうの?せっかく始まったばっかりなのに?なんならその辺にある食事食べてジュースでも飲んでいいんだよ?」


いや、さすがにマスターの知り合いとはいえ他人の私がそんなおこがましい。


「いえ、それは遠慮しておきます。」


「なんで?」



え?

私は店の隅でマスターと2人で話していたつもりだったが、後ろからさっき聞いた声が聞こえ思わず目を見開いた。


なんで主役の総長さんがこんな隅にいる私たちの話を聞いてるの?