「戦力の分散は逆効果だ。それに、大蛇が俺らに復讐するのであれば呼ばなくても勝手にこっちに攻めてくる。それを逆手にとってこっちも100%の戦力で戦えるようにこのたまり場で迎え撃つ。」
一番単純だけど、一番確実な方法だな。
相手は総勢250名以上の戦力を有していて到底人数は届かない。
関東連合は集まっても150人くらいだろう。
暴走族を名乗る以上不正行為を働くチームが多いのが現実だ。
その一つ一つを取り締まって解散させても、仲辰夫を中心に大きな組織となって集結してしまった。
大きな組織を迎え撃つにはこっちも最大戦力を一つに集めるしかない。
瑞希さんが話した作戦で私も賛成だ。
「わかった。私は今からまた街に戻るよ。私も明日日が沈んでからたまり場に留まるつもりだけど、今日私がここにいても何も出来ないからできることをしてくる。」
「おう。何かあればすぐ連絡くれよ。」
「わかってる。」
「あと…。」
「ん?」
「話、あるんだろ?」
あ、忘れてた。
自分で言っときながらさっきの話が重たい話しすぎて自分の話をすっ飛ばすところだった。
「メンバーに話が終わり次第、onyxで会おう。大蛇も明日動くって言ってたんだろ?今日は俺がここに留まる意味は無い。4時には行くようにする。待ってろ。」
私の目を捉えて話さないその瞳は、強い眼差しだった。
私も瑞希さんから視線をそらさず、しっかり目を合わせて応えた。
「うん。わかった。じゃあ、後で。」
今は2時半
1時間半後、私は病気のことを瑞希さんにだけは話すと決めた。
彼にだけは知っていて欲しい。
いつの間にかそう思うようになっていた。
1度固めた決心は揺るがないもので、倉庫を出て街を回っている間も動揺することなくこなすことが出来た。
街は静かで、何かが起こるとは考えられない雰囲気だ。
念の為に大蛇が集まっていた周囲も回ったが、もう人だかりは見当たらなかった。
いつもの街並みに、いつもと同じ時間の流れだ。何ら変わらない。