月下の少女


翌日、9月4日の1時を迎えた。
日の出時間は5:15


左手の痺れは相変わらずだ。

むしろちょっと痺れる頻度も増えている気がする。


でもこのくらいなら大丈夫。


日記もいつも通り書けたし、右手は問題無さそうだ。


しばらく歩いていると、店から見て関東連合のたまり場と対になっている場所に50人前後の人集りを見つけた。


私は身を潜め会話に耳を傾ける。


「明後日は決戦だ。お前ら準備はいいな。」


「「「はい!」」」


「明日から暴れるぞ…。」


淡々と色のない声で語る目つきの悪い男と、そのまわりに集うニタニタ笑う男たち。


その人たちが何者なのか、それが分かりそうなものは何一つない。


だが、一目見て目つきの悪い男が“仲辰夫”だと思った。


9月6日は明後日のはず。


明日から?何が始まるの?


一人で飛び出して蹴りを付けたい衝動に駆られつつ、ここで揉めても何も始まらないと思いとどまり、私はその足で関東連合のたまり場に向かった。


走りながら移動しつつ、スマホで幹部たちにメッセージを送った。


その後、瑞希さんだけに“話があります”とだけ追加でメッセージを送った。


こんなに走ったのは何時ぶりだろう。


大丈夫。まだ走れる。


倉庫の前には大蛇を警戒しているのか、関東連合の数名のメンバーが警備に当たっている。


私は呼吸を整えてから、警備メンバーに軽く会釈をし倉庫内に入った。


奥にある扉の前に立つと、この扉を自分で開けるのは初めてで少しだけ戸惑ったが、意を決してドアノブを捻り押し開けた。