「綺麗だよ。春陽は誰よりも。」


え?今なんて?


「喧嘩の腕は一流。それも綺麗な喧嘩ってなんだよ。喧嘩って血まみれの汚ぇものだろ?聞いたこともねぇ。俺が春陽を初めて見た日はもう喧嘩が終わったあとだったしな。今度見せろよ?」


「私は好きで喧嘩している訳ではありませんから。喧嘩なんてないに越したことありません。」


「まぁ、機会があったらいつか見せてくれよ。あ、あそこに止まってる車。あれに乗っててくれ。もう少ししたらイベントが始まる。俺も後で行くからよ。じゃ、後でな。」


イベント?

この前もお祭り騒ぎの誕生日パーティーしてたのに今日もイベントがあるの?


随分年がら年中騒ぎまくる集団なのね。


来てしまったからには従う他なく、私は黙って誰も載っていない車の後部座席に乗り込み総長さんを待った。


この時期に長袖長ズボンはさすがに暑い。


車の中クーラーが聞いていてとても心地よかった。


そういえば、私が月下の少女だってここにいるみんなは知ってるのかな?


真っ黒の格好にフード姿
少し離れれば男か女かすらわからない。


車外を見渡しても誰もこの車に近寄る人はおらず、自分たちの話に夢中だ。


自意識過剰か。