1年程前に公弥さんに呼び出しをくらいonyxに向かう途中、裏通りで男たち数名とすれ違った。


男たちは何かに怯えるような慌てるような素振りで走り去って行った。


何事だ…?


俺は男たちが来た道を辿って行くと一人の怪しげな人影を見つけた。


誰だ?


男?


月光に照らされ、一瞬見えたのは少女の顔。


真っ黒の服装に身を包み、手からは血が滴っていた。


袖から除く手は色白で、折れてしまいそうなほど細い。


表情までは見えないが、何やら箱に向かって話しかけている。


ヤバいやつにしか見えないな…。


「大丈夫?怪我はない?」


「クゥーン…。ペロペロ…ッ」


「アハッくすぐったいよ。」


子犬…?


もしかして、あいつらから子犬を守ったのか?


それも血だらけになりながら。


見た感じ出血も多くないし、大丈夫そうだな。


子犬に向ける少女の顔は自然体で、思わず見とれてしまう。