月下の少女


「俺の用事は春陽。お前にだよ。」


「え?私?私、何かしました?初対面、ですよね…?」


動かしていた手を止め、思わず総長さんの顔をガン見してしまった。

直ぐに目を逸らしたが、不自然だったかな。


「春陽からしたら初対面だか、俺は一度春陽を見かけてるからな。初対面って感じもしない。」


私を見かけてる?いつ?どこで?

頭をフルに回転させてもその答えが出てくる訳もなく、思わずため息をつく。


「それで、私に用事ってなんですか?片付けながらで良ければ聞きます。」


頭をフル回転させながら再び手を動かす。

話を聞く体制としては失礼な格好だが仕方ない。


「春陽、お前、“月下の少女”だろ?」


…あー。その話か。


別に隠している訳では無いが、公に晒している訳でもない。

でも何故総長さんがそんなことが気になるんだろう?


「前に月下の少女を見たことがある。少ししか見てないが、春陽を見た瞬間すぐ分かったよ。」


さすが、鋭い…。