月下の少女


「…瑞希さん?」


「瑞希。そう呼んで。」


「み、瑞希?」


「うん。それでいい。やっと、手に入れた…。」


瑞希と初めて呼んだ瞬間、私を抱きしめる力が少し強まり、私も瑞希に手を回す。


「これであってる…?」


抱きしめるって難しい。


初めてで正解がわからず、瑞希に手を回しつつ上目遣いで瑞希を見つめた。


「春陽、お前煽ってんの?」


「??」


煽る?何を?


「まぁ、そうなるわな。でもまぁ、今はこれだけで十分だ。」


瑞希は訳の分からないことを言いながら、抱きしめる腕を緩めない。


私もそれが心地よく、抱きしめ合い続ける。


しばらくお互いの温もりを感じつつ、体が離れた時にはなんだか肌寒く感じた。


「ねぇ、瑞希。」


「なんだ?」


「ほんとに、私でいいの?」


「良いに決まってるだろ。」


「私は確実に瑞希より先に死んでいく。普通のデートはできないし、これから先、日常生活もままならなくなる。絶対負担になる。そんな私で後悔しない?」


後悔するぐらいなら、今ここで手を引く。


今ならまだ間に合う。


でも、一度一緒になってしまったら離れられなくなってしまうから…。


「後悔するかもしれねぇし、しないかもしれねぇ。未来のことは誰にもわかんねぇよ。」


やっぱりそうだよね…。


「でも、春陽を好きになったこと自体を後悔することは絶対にない。あの時、こうしてやればよかったとか、そういう後悔はするかもしれない。でも、春陽と一緒になることを後悔することはこれから先も絶対にない。約束する。


だから俺は、春陽を彼女にする。俺と付き合え。」