月の下、1人佇むパーカーのフードを被った少女の周りには数え切れない男たちが倒れている。


華奢な身体の少女が1人でこの惨事を作り出したとは誰も思わないだろう。



この惨事を見た人は皆口を揃えてこう話す。

「綺麗だった」

と…。


血を流し、白目を向いて倒れている男たちがいる場を綺麗だったと表現する意味は、見たものにしか分からない。


フードの下に見え隠れする顔は真っ白で、血の気も感じない。


少女はその場を颯爽と立ち去り、少女がいた痕跡は何も残らなかった。


少女は何者なのか…。


死神か?そんな噂が飛び交う。


その日以来、前触れもなく夜にだけ現れる少女のことを人々は“月下の少女”と呼ぶようになった。