君の胃袋を掴む


怒るわけも凹むわけもない。
女に怒鳴られようと刺されようと、飄々としている男だ。

最初にあげたカップケーキだって、修羅場の後だった。

そんなわけない、と自分に言い聞かせた。
封筒を握りしめる音が、耳に響いた。





バイト先に行くと、店長がシフトを作っていた。お疲れ様です、と声をかければこちらを振り向く。

「お疲れ様。パスタの彼、昨日も来てたよ」
「昨日、も?」
「一昨日も来てたんだよ。一昨日はグリルサンド注文してた」

店長は常連さんの顔は勿論、一度来店した客はきちんと何を注文したかまで覚えている。