君の胃袋を掴む


両親と一緒に住まないのか、と前に聞いたことがある。

「僕、一人が気楽だしさ。今更親面されてもね」

煙草に火を点けながら雅宗が答えた。

今まで一緒に居て知ったことだけれど、雅宗は機嫌が悪いと煙草を吸う癖がある。
どんな女に怒鳴られたり刺されたりしても、喫煙することはなかったのに。

それから、家族の話はしていない。

「小梅ちゃん、今日泊まってくっしょ」

クライマックスに涙していると、ティッシュケースを差し出しながら言われる。

え、と掛け時計を見上げた。遅いけれど、終電ならまだ間に合う。