今夜も、街で初めて会った男に即効ホテルに連れ込まれた。
でも、彼は少し離れてベッドに腰掛けたままだった。
「……ねぇ」
「なに?」
思わず、私の方から沈黙を破った。
彼のじっとこちらを見る眼差しが、私に酷く突き刺さる。
「なんで、抱いてくれないの?」
「抱いて欲しいの?」
段々とこちらへと攻められて来る。
男と女が同じ一室に、しかもホテルに来る理由なんて、ひとつしかないじゃない。
「うん」と頷けば瞬間にベッドに押し倒される。
あぁ、と思って、同時にぎゅっと目を閉じた。
「やーめた」
「え?」
頭上から声がして目を開けると、彼は既に私の傍から離れていた。
「……なに。どうして?」
予想外の展開に、思わず身体を起こした。
……そんなに私じゃ魅力なかった?
「違う、俺が嫌なの。軽い男だって思われたくない」
心の声を察したかのように彼は答えた。
「こんなところまで連れ込んでおいて?」
「それはさ、流れじゃん?」
「意味わかんない。私帰るから」
「ちょーっと、待てって!」
ベッドから降りようとすると、引き止めるように強く腕を引っ張られた。
「なんなの?」
「俺とさ、話しようよ」
「……は?」
突然、何を言い出すかと思ったら。
予想もしなかった展開に、間抜けな声しか出なかった。
「話すことなんて、何もないよ」
「じゃあさ俺の話、聞いてよ。聞いてるだけでいいからさ」
「……」
そんなに言うのなら、少しくらい聞いてもいいかな、とも思えた。
部屋を出て行くのをやめて、再びベッドに腰を下ろす。
「……ありがと」
すると、彼は優しく微笑んでくれた。
それから仕事のこととか、身の回りのこととか。どうでもいいようなくだらないことまで、色んな話を私に聞かせてくれた。
彼の話に大して話題を振り返すこともなく、適当に相槌を打ち続けた。
だけど、彼の話をずっと聞いてるのは不思議と退屈じゃなかった。
「あと俺がね、お前に声掛けた一番の理由」
「理由……?」
声を掛けたことに、果たして理由なんて有るのか。
「すっげえ寂しそうな顔してたから」
「……なにそれ。同情?」
「ちげぇって。あんな姿見たら、なんか放って置けなかったの。気が付いたら身体が勝手に動いて。で、声掛けた」
「それ絶対に嘘でしょう」
「マジだって!」
そんな嘘みたいな話、簡単に信じられる訳なかったのに。
「なあ、こっちおいで」
両手を大きく広げる彼の胸にすんなりと飛び込めたのは、きっと真っ直ぐと私を見つめる彼の視線があまりにも真剣だったから。
いつもの私なら、絶対に素直に言うことなんて聞いていないはずなのに。
ぎゅっと強く抱き締められるのが、こんなにも安心できて。同じ様に抱き締め返した。
「私ね、ずっと寂しかった」
「……うん」
「だから毎日毎日、寂しさを埋めるのに必死でね」
彼の温もりが伝わってくる。
さらに、頭を強く引き寄せられた。
貴方のおかげで、人の温もりがこんなにも心地の良いことを初めて知ったんだ。
「ばーか。もう、これからは寂しくなんかさせねぇよ」
desire and affection(欲望と愛情)

