要約すると、ユウの母親とマネージャーとが不倫の末、お互いの家族を捨てて駆け落ちした、ということなのだが。
何度読んでも、気持ちのいい記事ではなかった。

4年前のことだ。
彼もまだ、その時の事をよく覚えている。

逆上したA氏の妻が生々しい証拠写真をマスコミに流したため、ワイドショーは連日その話題を取り上げた。

――お騒がせして、本当に申し訳ありません。

突き付けられた大量のマイクに向かって少女が深々と頭を下げる姿は痛々しく、可哀そうにと思った記憶がある。

彼女は何も悪くないのに。
それどころか被害者と言ってもいいくらいだ。
母親とマネージャー、おそらくこの世で最も信頼していた2人に裏切られ、見捨てられたのだから。

もう引退するのではないか、彼を含め、多くの人がそう思った。
実際、一時その姿はテレビから消えたのだが――なんと彼女は戻ってきた。


スマホ画面をカメラ機能へと戻した男は、ユウの笑顔を切り取った写真に眼鏡の奥の目を細めた。

マイクの前で震えていた、あのあどけない少女はもういない。
母親との別れを、立派に乗り越えたのだろう。

それならば、と彼は思う。

主役クラスでもっと華々しい活躍をしてもいいのではないか。