「俺の名前、椋野夜焚(むくのよたき) って言うんだ。 名前でいいよ」 気づけば名前を教えていた。 君に呼んでほしくて。 そんな俺に、彼女は嬉しそうに ふわりとほほ笑む。 「夜焚くんが雨やどりしてるのを 見つけて、たまらず 声をかけてしまったの」 ふり返る彼女の目からは、 たくさんの涙があふれ落ちていた 。 生きていた君に、 もう少し早く出会えていたのなら。 迷いなく俺は、 君のことを好きになっていただろう。 そして、君があこがれてた学校や、 色んなことを、 聞かせてあげられたりもできたのにな。