生まれた時から声が出なかったわけじゃない

小さな頃は、今よりもっと明るくて、

お父さん譲りのこの金髪を、誇りに思ってた

それに、年上の優しい幼なじみだっていた。

いつも私と遊んでくれた、優しいお兄ちゃん

今でもずっと優しい、私の大好きなお兄ちゃん。

「じゃあまた後でね、つむちゃん!」

学校では、花陽ちゃんが私に手を振ってくれて、それに笑顔で振り返しD組に入った。

このクラスに、私の友達はいない。

失声症の私と話すのは大変だから、

みんな嫌がってよってこようとしない。

それにこの金髪だって、みんなと違う目の色だって、悪い意味で人目を引いて、すごく嫌だ。

「つむ!」

そんな自己嫌悪に浸っていると、大好きなお兄ちゃんが教室の前に立っていた。

ブラウンのサラサラでふわふわな髪の毛に、
中性的で優しい顔立ちの人気者。

すぐに近寄ると、お兄ちゃんは笑顔で私の頭を撫でてくれた。

「おはよう、つむ。今日の昼休み、空いてるか?今日は中庭で昼食べような。」

空いてるよ!の意味を込めて、何度もコクコクと頷く。

それに満足したのか、お兄ちゃんー蓮くんは
もう一度私の頭を撫でて自分の教室に戻って行った。