あ……。

「楓くん……」

そして、私の声掛けに振り返ることなく階段を降りていった楓くん。

城本さんも楓くんの後を追うように続いた。

……そうだよね。

止めさせるためとはいえ、叩くのは違かったよね……。

まだ熱を持ってる右手をそっと左手で包みこむ。

ごめんなさい……楓くん。

ごめんなさい、百合さん──────────

* * *

気分は落ち込んだまま、気づけばもうお昼時。

食欲出ないな……。

人が行き交う楽しい雰囲気の廊下をトボトボと歩きながら、私は一人、さっきの楓くんのことを後悔していた。