「じゃあ、おやす─────……ん?」

一呼吸置いて席を立ち、リビングを出ようと楓くんとすれ違った瞬間。

ふわっと香ったのは、いつもの楓くんの匂いとちがう芳香。

これって……。

「百合の香り?」

「そんなに匂いしてるか?」

楓くんは自分のブレザーの匂いをくんくん嗅ぎながら小首を傾げた。

「さっき墓参り行ってきたから」

あぁ、だからこんな遅くまで…………って─────

「え、今日!?」

あれだけハードな仕事のあとに!?

私は目をぱちぱちしながら楓くんを見上げた。

た、タフすぎる……。