ボーッと一点を見つめながら考え事をしていた私の視界に軽快に入ってきた何か。

私は一瞬にして思考も身体もフリーズ。

対して、視界に入ってきた張本人は私に向かってニコッと微笑んでいて。

「僕、林山凛音(りお)! よろしくね、恋々愛ちゃん!」

自分の椅子に(またが)って、私の机に肘をつきながら自己紹介をしたのはさっきの金髪男子。

「あ……よ、よろしく……!」

ひきつりそうな口元をなんとか自然に装って笑ってみせる。

大丈夫かな……。

私、ちゃんと笑えてる?

男の子と話すの久しぶりだし、どうやっても“昔の記憶(トラウマ)”が邪魔をして上手く受け答えができる自信が無い。

「お前そんだけ引かれてるのにメンタルどうなってんだよ」

ードキッ。

ひ、引かれてるって……。

皮肉交じりに投げかけられた図星な言葉に、私と林山くんは声の主へと視線を向けた。

視線の先には、私の斜め前の席に座る茶髪男子。

気だるい号令をかけていた“楓くん”だ。

「うるさいなぁ! 恋々愛ちゃん、この人の声はシャットアウトしていいからね?? 一応学級委員長なんだけど、性格は見ての通り最悪で、俺様だし、わがままだし、いじわるだし、バカだし──────────」

-バシッ!

!!!

茶髪男子を罵りまくる林山くんの言葉を遮るように、乾いた音が教室に響く。

「っったあい!!!」

そう言って林山くんは楓くんに叩かれた頭をギューっと抑えた。

痛そう……。

大丈夫かな?

「ホントのこと言ってるのに叩くとかないでしょ!? りょーくんサイテー!」

大きな瞳に涙を溜めた林山くんは楓くんをキッと睨みつける。

だけど、楓くんは痛くも痒くもなさそうで。

「どこがホントのことだよ。学級委員長までしか合ってねぇじゃねぇか」

楓くんの整えられた眉がピクピクとイラついたように動く。

あぁ……この感じ──────────っ!!

-ブンブン!!

楓くんの怒った顔が“あの人”と重なりかけて、私は慌てて頭を振って再び記憶を奥底へしまい込む。

危ない危ない……。

早く忘れなきゃ──────────

-トントン。

-ビクッ!

「は、はいっ……!」

突然肩を叩かれた感触に、思わず声が上ずる。