「礼」

「「「「「お願いします」」」」」

ービクンッ!

30人近い人の声に改めて人の多さを実感し、私は肩を揺らして固まってしまう。

私の緊張はもうMAXで。

「今日から羅桜高校に転入してきた、桜川恋々愛さんです」

藤崎先生はクラスのみんなに私を軽く紹介した後、私に向かってニコッと合図を送った。

き、来たー!!

桜庭(さくらば)学園から来ました、桜川恋々愛です。よ、ろしくお願いしますっ!」

緊張で語尾が早口になりながら、それを紛らわすようにペコっと頭を下げる。

か、固まらなくてよかった……。

-パチパチパチパチ。

そんな私のぎごちない挨拶にも、拍手をしてくれるクラスメイトのみんな。

あぁ、帰りたい……。

「みんな、桜川さんに色々教えてあげてくださいね。じゃあ、桜川さんの席だけど──────────あら?」

ん?

思わず漏れた藤崎先生の不思議そうな声に、私は先生を見上げた。

どうしたんだろう?