「それじゃあ早速、教室に案内するわね」

* * *

待機場所を出て歩くこと数分。

私はキョロキョロと辺りを見回しながら再び高まってきた緊張と戦っていた。

遠い遠い廊下の突き当たりまで続く、床に敷きつめられた真っ赤な絨毯。

その脇には重厚感のある板チョコのような形の扉がズラリと並んでいて。

ヒシヒシと感じる洗練された空気に、心臓が早鐘を打つ。

こんなすごすぎる校舎、卒業まで慣れる気がしない……。

「ここが3年2組、桜川さんのクラスよ」

そう言ってピタッと足を止めた藤崎先生。

校舎の雰囲気に呑み込まれている間にもう着いちゃった……。

「中に入ったら私が黒板に名前を書くから、その後ひと言挨拶してね」

「は、はいっ」

挨拶……。

緊張するなぁ。

でも、これさえ切り抜ければ人前に出ることはないだろうし。

……よし、頑張ろう。

心の中でひそかに気を引き締め直した私を察してか、藤崎先生はニコッと私に優しく微笑みかけて目の前の扉をゆっくりと引いた──────────

扉が開いた途端、廊下に溢れ出した柔らかな光。

徐々に明らかになっていく教室の全貌に、私は目を見開いた。

木目調が優しい床と天井、それに映える規則正しく並んだ白い机と椅子。

そして、白い壁に等間隔でついてる窓からは太陽の光がサンサンと差し込んでいて、教室を明るく照らしていた。

なんてキレイな教室……。

「はい、じゃあHR(ホームルーム)始めます。(かえで)くん」

あっ……。

思わず教室を見入っていた私は、スタスタと教室の中へ入っていく藤崎先生の後ろを慌ててついていく。

「きりーつ」

藤崎先生に『楓くん』と呼ばれた茶髪の男の子は気だるそうに号令をかけ、それに従ってみんな立ち上がる。