「私に口答えするんじゃない! 何様のつもりだ? お前たちには関係ないことじゃないか」

お前……“達”?

お姉さんのほかにも誰か──────────

……あっ。

私の脳裏に浮かんだのはあの4人の顔。

「俺達は優羅が苦しむ姿なんか見たくない」

楓くんの声……やっぱりみんなもいるんだ。

そっと廊下の角から顔を出すと、みんながいる部屋のドアが開いているのが見えた。

みんなの姿こそ見えないけど、確かにその部屋で優羅くんのお父さんを説得している。

「そうだよ! 政略結婚なんてゆーくんが可哀想!」

「それに、親父さんも気づいてたでしょ? 婚約者の子、楽しんでいるように見せかけて本当は心から楽しめてなかったの」

葉森くん、気づいてたんだ……。