猫田さんは今から１００年前この学校に住み着いた猫だった。


この学校には長い歴史があると知っていたけれど、とっくに開校１００年を超えていたことに目をむいた。


当時の猫たちも今も同じ体育館裏に住居を構えて、昼間は気ままに移動をしていたらしい。


猫田さん一家もそうだった。


母親の後ろについて子猫５匹の子猫が一生懸命歩いている姿を想像して、怜美はたまらない気分になった。


しかし、そんな幸せな生活は長くは続かなかった。


当時は今よりも野良猫が多くて、学校の先生たちは実は困っていたようだ。


「もうこれ以上増えたら困る」


「そうですね。何件か猫を飼いたいと申し出ている生徒の家もあるようなので、検討してみますか」


そんな会話が聞こえてきたと思った直後、猫田さんの目の前で兄弟たちが教師に捕まってしまったのだ。


猫田さん自身にもその手は伸びてきた。


先生に捕まる寸前で猫田さんはその手をすり抜けて逃げていた。


「あ、こら！」


後ろから声が聞こえてきて、猫田さんは危機感を覚えた。


今にも後ろから自分の体を掴んで持ち上げられるのではないかと、ヒヤリとする。