「あんな被害に遭って、ちゃんと恋愛できないんじゃないかと思って」


時折鼻をすすりながら説明する飯田校長。


本当に彼女のことが気がかりだったみたいだ。


女性は家族３人で手をつなぎ、車に乗って出かけていってしまった。


「絵になった姿だけでも見てもらわなくてよかったんですか？」


猫田さんの質問に飯田校長は「いいんだ」と、少し寂しげに呟く。


「僕の顔をみたら、きっとあの時のことを思い出してしまうからね」


と、付け加えた。


そう言われると猫田さんもなにも言えなくなってしまう。


３人が乗る車が見えなくなるまで見つめてから飯田校長は「ハッハッハッハッ！」と、笑い声を上げた。


それはまさに桜ちゃんが聞いたあの笑い声だった。


さっきまで泣いていたのに、驚いて布を見るめると「こうして笑うと幸せになれるんだよ」と、教えてくれた。


それから３人はハッハッハッハッ！　と豪快な笑い声を立てながら、学校へと戻ったのだった。