「いいや、完全なプライベート。新年度だから、今の時期は特に多くもらう」

「就職や進学で、人が流れますもんね」

「そりゃあ、動物病院にきて、こんなロマンチックなイケメンがいたら? おまけに、優しいときた」
 清々しいほどの自画自賛。

「連絡先の、ひとつや二つ渡したくもなるだろうよ、俺に渡したい人の気持ちがわかる。渡さずにはいられないだろうよ」

 人懐っこい性格と笑顔のイケメンに、優しくされちゃうんだもんねえ。

 それに、なんて言ったって、大切な家族の一員の病気を治してくれちゃうんだもん。

 海知先生の言うことに納得させられる。

「二月、三月もありそうですね、転勤や卒業シーズンですし」
「ああ、告白な」
「される側ですか?」

「当然だろ、俺がするわけないだろ。まあ、星川にはわからないよな、俺にとっては日常」

「これ、進展するんですか?」
「ゴタゴタすんのが嫌だから、こう」
 人差し指と中指で挟んだメモを、お清め箱みたいな箱にバサッと放った。

 うわあ、山盛り。これで何回分だろう、二、三日分かな。

「これ、どうするんですか?」
「あとで院長が処分する」
「タイプの女性のでも?」
「あいにく出会ったことがない」
「出会ったら?」
「そのときは、そのときだ」
 まあ、とにかくモテモテなのはわかった。

 その後、話は今日の野良猫のことから始まり、犬猫の話題になったら、話が尽きない。

「猫は独立心が強くて人間に媚びない」
「うちの子たちも、そうでした」

「猫は、人間の環境に住む動物の中で、野性的な特性を持つ、唯一無二の存在って言われてる」

「よく昔の人は、野生動物の性質の猫を飼おうと思いましたね」

 猫が人間に対して、気ままな面があるとは思っていたけれど、野性的なのか。
 それなら、猫の行動や性格に納得。

「猫は飼育されたんじゃない。人間の暮らしが、自分にとって都合がいいから居ついた」
 なんとなく、ちゃっかりしているところが猫らしくて、思わず吹いちゃった。

「猫は人間を支配するためにいる。今も昔も、猫に支配されたい人間が、一定数いるんだろう」

 さながら人間は猫の家来か、言い得て妙。

「逆に、犬は人間の最良の友ですよね」
「猫とは正反対だよな」
「犬は人間のベストパートナーです」

「犬は群れで暮らす動物で、リーダーである人間に従い、人間という仲間と共に、働くことに喜びを感じる性質を持ち合わせてる」

「使役犬として賢く従順にしたり、大きな声で吠えるのは獲物を追い詰めたり、飼い主に教えたりだし、獲物を咥えてせっせと運んできたり」

 健気な行動は、人間の手となり足となり。

「そう、使役犬としてはな。愛玩犬としては、人間の暮らしに都合がいいように改良されてきた」

 愛玩犬としての外見を、より体を小さくしたり、目を大きくしたり、垂れ耳に立ち耳、長い顔に丸い顔、茶色に白や黒。