「これで安心したか?」
「はい! 動物看護師さんってわかったから」
「単純だよな、うらやましいぐらい」

 海知先生のいつもの笑顔を見たら、緊張していた体が軽くなって、軽く何度か首を振った。

「そんなに緊張するほど、体が強張ってたのか」
 遠慮なく鼻にしわを寄せて笑われた。

「また、私のことじゃないことで心配って言ったら、爆発しますからね」

「脅迫かよ、悪い奴だな」

「だって、私が爆発して海知先生にわからせないと、海知先生は気づかないで、ずっとおなじ過ちを繰り返して、人を傷つけます」

「傷つけてたなんて、ごめん」

「私が爆発してわからせないと、海知先生も傷つきます。どっちに転がっても傷つき傷つける海知先生を想ったら、耐えられません」

「今までも気づかずに、無意識に傷つけてきたのか」

「そう落ち込まないでください。今、この瞬間から気をつければいいでしょ?」

「あいつと比べないで、目の前の人のことを想って発言には、十分に気を配るよ」

「それでいいんですよ」
「こら、調子に乗んな」

 海知先生は、きゅっと片側だけ口角を上げて笑って、私は間が悪くて肩をすぼめて笑った。

「まさか、俺を叱る新人が現れるとは、前代未聞の出来事だよ」

「新人だろうと、海知先生を想えば怒りますよ。私にとって海知先生は、どうでもいい人じゃないですもん」

「それは、それは恐れ入ります」

「私だって、もう傷ついたり嫌な想いをしたくありません、次は許さないから」

「俺に向かって大した度胸だな、星川みたいな猛者は初めてだよ」

「度胸があるんじゃなくて、私がないがしろに扱われるのが嫌だって意味もあります。海知先生が大切なことも事実ですし」

「ないがしろか。そのつもりは、まったくなかった。デリカシーもなく傷つけてたんだな、ごめん」

 いいの、いいの、私は海知先生を見守っている、おとなな私なんだから。
「にやにやして、気がすんだか」

「また、そういうこと言うから」
 はっ、こんな煽りにカリカリしていたらダメ、私はおとななのよ。

「人は過ちを起こして成長するものなの、だから気にしないでください」

「急になんだよ、いきなり達観した物言いして、ずいぶん老け込んだぞ」

 美丘さん、この悪態も笑って許します、だって私はおとなだから。

 疑問に感じて納得いかないから、今日は海知先生と向き合いました。

 アドバイスありがとうございます。

 美丘さんの助言がなかったら、私は見守るなんて発想がないから、今ごろどうなっちゃっていたかな。

 これで、またひとつ海知先生が幸せになりますよね。