ただでさえ、爽やかが洋服を着て歩いているような清々しい人なのにね。

 今の海知先生の顔は、爽快で晴々して達成感に満たされて、とても気持ちよさそう。

 結局、タップは海知先生がおっしゃっていた通りだった。

 見た感じ健康体で、病識がなさげなタップは、他院に問題行動を矯正する目的で通院していた。

 今回、海知先生が慢性疾患を確認したことにより、不穏な問題行動は慢性疾患が原因だと判明した。

 その後の診察で、海知先生はオーナーに、さまざまな検査結果を丁寧に説明して、オーナーからの質問には、理解してくれるまで根気よく答えていた。

 オーナーにとって、仲秋は単に予備の動物病院として押さえて、試しに健診で来院しただけのつもりだったと語っていた。

 かかかりつけ医が長年に渡り、見落としつづけていた病気を、海知先生が見つけたことで、オーナーは仲秋に全幅の信頼を寄せた。

 今後はオーナーの要望で、仲秋が全面的に治療を施していくことになる。

 それにより海知先生は、院長と獣医師で今後の治療方針を決定する会議を開き、タップによりよい治療を進めていくことも、オーナーに話していた。

 海知先生の斜めうしろに座り、新しいカルテに、タップの病歴やアレルギーの有無などの情報を次々と記入した。
 
 今までのタップの苦痛がかわいそうでたまらない。

 仲秋なら、院長も泉田先生も海知先生も見落とすなんてことは、まずしない可能性が高い。

 しかし、獣医療って難しいな。

 問題行動の裏には、実は大きな病気が隠れていたなんて。

 問題行動ばかりに、目がいってしまいがちで、まさか病気が関係していたとは思いもよらなかった。

 お互いが結びつくイメージがない。

 海知先生は、先入観を持たないとも言っていた。
 こうして、結果を出してお手本を見せてくれるから、説得力がある。

 私も先入観を持たずに、物事に取り組み判断しようと、改めて思った。
 
 海知先生は、画像診断や検査結果から考えていた疾患が、実際に当たるとワクワクする、タップを救うんだってやる気満々。

 院長をはじめ、泉田先生と海知先生と美丘さんの結束力やチームワークのよさに、日常的に関わっていると確信する。

 タップの慢性疾患は完治して、それに伴い、問題行動もなくなると。