自ら命を絶とうとした罰。
人の心を顧みなかった罰。
自分を愛さなかった罰。
全部心当たりがあって涙が溢れた。
ジミーアの死。
人の心を学ぶ。
そして今度こそ自分自身を愛せるように。
とても慈悲深い罰だ。
新たな役目を与えられないということは、自由に生きろという意味。
これからも、贖罪は続くということだ。
「はい。生きます。精一杯。今度こそ……」
ジミーアだって精一杯生きていたと思う。
自分のために生きすぎたのに、自分のことをまるで愛していなかった。
闇から光の下へと戻る。
タルトの頭上で輝く太陽。
森が風聖獣様の祝福であたたな木の葉の音では囁いている。
村の人たちにが溢れる光に手を伸ばし笑う声。
青い空に、白い雲がかかる。
今まで当たり前にあったもの、すべて……どれも、これも、涙が出るほど美しいと思った。
これが命への祝福。
ああ、なんて……なんて私は無知だったのだろう。知らなかった。
——世界はこんなにも美しかったのか。
私が産まれて、生きていた世界はこんなにも。
「火聖獣様の、祝福……」
『うむ。ヒトは見えるものが我らと違う。ミーアよ、そなたも我らが見ている世界の一端が垣間見えたか?』
「はい……とても美しいです……」
風聖獣様が隣に来て、私の横に座る。
もふん、と私の体半分が羽毛に埋もれてしまう。あったかい。
『いろいろなものを見て学び直しなさい。我らの加護は、そのために与えたのだ』
「! ……。……はい」
一瞬だけ、一度死を選んだ私がそんな贅沢をしてよいのかと疑問を持った。
けれど、闇聖獣様と風聖獣様の言葉を、私は胸に刻み込む。
私は私を、愛してあげなければならない。それが贖罪だ。
なら、もう……隠さないで生きよう。
自分が変人だと自覚した上で、そんな自分も愛してあげよう。
薬だけでなく、私自身も。
「では帰る!」
『二度と来るな』
「エルフォルド、たまに顔を見せに来い! 聖女、汝もである! 余の加護を与えたのだからな!」
「え、えぇ……? ど、努力いたします……?」
「絶対であるぞ!」
火聖獣様、普通に森から徒歩で帰るのか。
あと聖女って私のこと?
やめてほしいのに、その呼び名。
どうあがいてもスティリア王女の顔がチラつく……。
「聖女?」
「ミーアが?」
「! あ、いや、え、えーと、その……せ、聖獣様の怪我に効果のある薬が作れたの! そ、それでなんか、喜んでくださって、そ、そういうあだ名みたいな!」
「ふーん」
「聖女かぁ。タルトが“奇跡の子”でミーアが“聖女”なら……おれは……、……俺は本当にダメな人間だな……」
「「カーロ……」」
声は出るようになったけど、火聖獣様の登場によりまた自己肯定感がだだ下がりしてない……?
というかカーロは王子様なんじゃないの?
根本から真っ赤に染まるほど強い加護を火聖獣様にいただいてて、『ダメな人間』はないよぅ。
「タルト、カーロ、ミーア、僕は聖森国に一度帰るよ」
「あ、ルシアスさん」
そんなカーロの頭にポンと手を置いて、行商人モードのルシアスさんが挨拶に来てくれた。
すごい。
あの冷たい眼差しや、シスコンな部分まで綺麗に隠れてしまっている。
すごい。
髪もいつもの藍色だ。
どうやって染めてるんだろう?
あ、水聖獣様の御加護の力かな?
すごいなぁ。
「夏季中旬には聖森国でも聖獣祭が催されるから、国を挙げて招待す——いや、みんなで遊びにおいで」
「え、えーと」
今なんかとてつもなく不穏な言葉を言いかけませんでしたか?
「特にミーアは、ぜひ。僕の妹とぜひ、友達になってほしいし。女の子同士だし。ね? ぜひ、ぜひ」
「……」
あ、あの件忘れてなかったのか……。
言葉尻は柔らかいけど圧がすごい。
顔の圧はもっとすごい。
「本当に頼む。今年から貴族学院に入ったんだけど本当友達いなくて妹が独りぼっちでとぼとぼ帰ってくる姿を見るのがつらい!」
「わわ、わ、わわかりました! わかりましたから! 縋りついて泣かないでください!?」
妹さんが関わるとギャップがひどいなこの人。
「じゃあ、聖獣祭の時にお邪魔します」
「ありがとう! ……それまでにスティリア王女は崖の国に突き返しておくよ」
「よ、よろしくお願いします……」
ルシアスさんはとってもいい笑顔だった。



