数分後、男子の集団がワイワイ話しながら
私が待つ校門へ近づいてきた。


よし、行く!
頑張る!
羞恥心捨てる~!!



「お、オツカレ!!」


私が精一杯作った笑顔でサッカー部の集団の前に
立ちはだかると、明るく飛び交っていた話し声が
ピタッと止んだ。


「七瀬…どうしたんだよ。」

香月くんが困惑の色を浮かべながら私に尋ねた。


「い、一緒に……一緒に帰ろう!」


途端にサッカー部の人たちが
「うお~」とか「ひゅ~」とか言って煽る。


「え…まぁ…いいけど」

香月くんは渋々といった感じで
私の誘いに乗ってくれた。


「お前、そろそろコクられるんじゃね?」

コソっと大連くんが香月くんに囁いたのが
聞こえた。


っっ、やめてよ!
コクんないよ!
好きじゃないよ!


香月くんの反応を見るのがなんだか怖くて、
私は視線を地面に落とした。



「じゃあ、また明日。」

香月くんはナチュラルにみんなに別れを告げると、
私のそばに来て言った。

「行こうぜ、七瀬。」

「う、うん…!」


この人、優しいな…

部活の友達と帰る方が楽しいだろうに…


いや、待てよ。
香月くん、告白されると思ってるのか…

そりゃ真剣に告白してくれようとしてる女の子に
誘われたら行くよね。

義理で。


ヤバイ!

まだ香月くんと帰るの二回目なのに。

いつ予知夢が現実になるのか分かってないのに。

義理で一緒に帰ってもらうのなんて、
そう長く続きそうにないよ…

どうしよーー!!


「今日の練習もスゴかったね~アハハ…」

「また見てたのか。」

「うん…アハハハ~」

「……。」


香月くん、気まずそうにしてる!

私にコクられると思ってるからだ。


え、なにこれ。
コクらなきゃダメなの?

コクらなきゃ一緒に帰る理由ないの?

友達…私たちは友達…トモダチ……


「こ、これから…毎日一緒に帰らない?
と、トモダチだし。」


「は?」


香月くんは今までの優しい口調とは違う
低い声でそう言った。