「あと、特に気になってるんだけど……小日向さん、最近急に恋愛シーンが薄っぺらくなってるんだよね……」
「!!」


 この時ビクリと肩の跳ねた彼女に、漫画風の効果音を付けるのであれば『ドキィッ!!』である。
 人間関係の動きや話の運び、心理描写など……実を言えば、薄っぺらくなっている自覚はあったのだ。しかし同時に、その理由や原因も理解できていた。

 そう――……ついに、前世で和臣と愛を育んだ記憶の実体験ストックが底を尽きたのだ。