「……先日、ブレンドコーヒーをごちそうになりましたから、今日のはそのお礼です。お気になさらず。それより……本当に送らなくて大丈夫なんですか?」
「大丈夫です! お家までここから徒歩5分なので!! でも、気持ちは嬉しいです。ありがとうございます」
「……いえ、お礼を言われるようなことは何も。……お気をつけて」
「はい! ゆうい……倉本様も、気をつけて帰ってくださいね!」


 律儀に一礼して去る恋幸の背中を見送りながら、車に乗り込んだ裕一郎がエンジンをかけた時――……なにやらこちらを向いて両腕をぶんぶん振る彼女の姿に気がついた。