――……どうしてやめてしまうんですか?

 ソファに寝転んだまま、(まぶた)を持ち上げて瞳だけでそう問い掛ければ、ほんの一瞬だけ表情を(やわ)らげた彼がおもむろに眼鏡のフレームへ手を伸ばし、


「そんな顔をしなくても、まだやめたりしませんよ。……足りていませんから」


 そう言いながら外した“それ”を雑にセンターテーブルへ置くと、もう一度顔を寄せて深く唇を重ねた。


(裕一郎様のキス、気持ちいい)


 彼が漂わせる金木犀(きんもくせい)に似た甘い香りは、いつも恋幸の脳みそを痺れさせる。