今の所とはじめに注釈(ちゅうしゃく)が付くものの、とても健全な意味で恋幸が裕一郎と床を共にするのも3回目ともなればそろそろ慣れるはずもなく。
 相変わらず緊張で体を硬くしていた彼女だったが、裕一郎の体から香る石鹸(せっけん)の匂いを嗅ぎ、その大きな手で頭を撫でられているうちにあっさりと眠りに落ちていた。

 そんな恋幸が水族館のアザラシ展示用プールほどの大きさがあるグラスいっぱいに注がれたメロンソーダを飲み干し、キングサイズベッド並みの巨大なたい焼きを完食した夢から覚めると、当たり前だが「仕事がある」と言っていた裕一郎の姿はすでに見当たらない。

 ここまでは『いつも通り』の朝だった。


(行ってらっしゃい、って言いたかった……)